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コラム

交通事故の慰謝料はいつ支払われる? 受け取りまでの流れと治療中に使える制度を解説

2026.08.30

交通事故に遭われた後、治療を続けながら「慰謝料はいつ受け取れるのだろうか」と気にされる方は多くいらっしゃいます。仕事を休まざるを得ない状況では、当面の生活費をどうするかという不安も重なります。
慰謝料を含む賠償金は、原則として示談が成立した後に一括で支払われます。そのため、事故から受け取りまでには一定の期間を要します。ただし、治療中に受け取れる費目や、まとまった金額を先に受け取る制度も用意されています。
この記事では、慰謝料が支払われるまでの流れと期間の目安、治療期間中に利用できる制度、支払いが遅れる場合の要因について解説します。
 

① 慰謝料は示談成立後にまとめて支払われる

交通事故の賠償金は、慰謝料・治療費・休業損害・逸失利益といった複数の費目で構成されています。このうち慰謝料は、示談が成立して金額が確定した後に支払われるのが原則です。
 

なぜ治療中には受け取れないのか

慰謝料のうち入通院慰謝料は、入院や通院の期間・日数をもとに算定されます。治療が続いている間は期間が確定しないため、金額を計算することができません。
また、後遺障害慰謝料については、症状固定の後に後遺障害等級の認定を受けて初めて金額が定まります。したがって、治療の完了と等級認定を経てから、賠償額の全体が確定することになります。
 

示談成立から入金までの期間

示談書(免責証書)に署名して保険会社へ返送すると、その後おおむね2週間以内に指定口座へ振り込まれるのが一般的です。保険会社によっては1週間程度で入金されることもあります。
月末や連休を挟む場合には多少前後することがありますが、示談成立後の支払い自体はそれほど時間を要しません。時間がかかるのは、示談に至るまでの過程です。
 

② 賠償金を受け取るまでの流れ

示談に至るまでには、いくつかの段階を経ます。ご自身が今どの段階にいるかを把握することで、見通しを立てやすくなります。
 

事故発生から治療終了まで

事故直後は、警察への届出と医療機関の受診を行います。人身事故として届け出ることで、実況見分調書が作成され、後の過失割合の検討に用いられる資料となります。
その後は、主治医の指示に沿って通院を続けます。この期間中に、治療費・休業損害・通院交通費といった費目について、順次支払いを受けることになります。
 

症状固定から等級認定まで

これ以上治療を続けても症状の改善が見込めないと主治医が判断した時点を症状固定といいます。症状が残っている場合には、後遺障害診断書を作成してもらい、等級認定の申請を行います。
申請の方法には、相手方保険会社を通じて行う事前認定と、被害者側が自ら資料を揃えて行う被害者請求の二つがあります。認定結果が出るまでには、通常2〜3か月を要します。
 

示談交渉から入金まで

治療が終了し、等級認定の結果が出ると、相手方保険会社から賠償額の提示があります。この金額について協議し、合意に至った段階で示談書を取り交わします。
提示された金額に納得できない場合には、交渉を続けることになります。協議がまとまらないときは、紛争処理センターの利用や訴訟の提起といった方法もあります。
 

③ 受け取りまでの期間の目安

事故発生から賠償金を受け取るまでの期間は、怪我の程度や後遺障害の有無によって大きく異なります。
 

ケース 事故から受け取りまでの目安
軽傷で数か月の通院 1〜3か月程度
物損のみ(怪我がない) 治療終了から1〜2か月 合計6か月〜1年程度
後遺障害の申請を行う場合 等級認定に2〜3か月 合計1年〜1年半程度
示談交渉が長引く場合 さらに数か月 合計1年半〜2年程度
訴訟に移行した場合 提訴から判決まで1年以上 合計2年〜3年程度

 
後遺障害の等級認定を申請する場合、申請から結果が出るまでに2〜3か月ほどかかります。
この期間を含めると、症状固定から示談成立まで半年近くを要することもあります。
受け取りまでの期間が長くなることを見込んで、治療中の生活設計を考えておかれるとよいでしょう。
 

④ 治療期間中に受け取れる費目

賠償金の全体は示談後の支払いとなりますが、すべてを待たなければならないわけではありません。治療中に支払われる費目もあります。
 

治療費

多くの場合、相手方の保険会社が医療機関へ直接支払う「一括対応」という取り扱いが行われます。この場合、被害者の方が窓口で治療費を負担する必要はありません。
ただし、これは保険会社の任意のサービスであり、法律上の義務ではありません。過失割合に争いがある場合などには、一括対応が行われないこともあります。
 

休業損害

仕事を休んだことによる収入の減少については、治療中でも月ごとに支払いを受けられる場合があります。勤務先に休業損害証明書を作成してもらい、保険会社に提出することで手続きが進みます。
毎月請求する運用に応じてもらえるかは保険会社によって異なりますが、生活への影響が大きい場合には、その旨を伝えて相談されるとよいでしょう。
 

通院交通費

通院にかかった交通費についても、治療の途中で請求できる場合があります。領収書や通院日の記録を保管しておくことで、請求がスムーズになります。
 

⑤ まとまった金額を先に受け取る制度

治療が長期化し、当面の資金が必要になった場合には、示談を待たずに一定額を受け取る制度があります。
 

自賠責保険への被害者請求

被害者の方が加害者の自賠責保険会社に対して、直接保険金を請求する方法です。自動車損害賠償保障法16条に基づく請求で、被害者請求と呼ばれます。
傷害に関する損害については120万円が上限となりますが、示談の成立を待たずに支払いを受けられる点が特徴です。相手方の保険会社との交渉が難航している場合にも利用できます。
 

仮渡金の制度

被害者請求よりもさらに早く資金を受け取る方法として、仮渡金の制度があります。当面の出費に充てるための前払い的な制度で、請求から1週間程度で支払われます。
 

怪我の程度 仮渡金の額
死亡した場合 290万円
脊柱の骨折・内臓破裂など重い傷害 40万円
14日以上の入院を要する傷害など 20万円
11日以上の治療を要する傷害 5万円

 
仮渡金として受け取った金額は、最終的な賠償額から差し引かれます。前払いという性質のため、後に受け取る金額がその分減ることになります。
 

人身傷害保険の利用

ご自身が加入されている任意保険に人身傷害保険が付帯されている場合、相手方との示談を待たずに、契約している保険会社から保険金を受け取れます。
過失割合にかかわらず支払われる点や、示談交渉の結果を待たずに済む点が利点です。ご自身の保険証券で付帯の有無を確認されるとよいでしょう。
 

健康保険を利用して治療を続ける方法

相手方の保険会社による一括対応が打ち切られた場合でも、健康保険を使って治療を継続することができます。交通事故による怪我であっても健康保険は利用できます。
その際は、加入されている健康保険の保険者へ「第三者行為による傷病届」を提出します。自己負担分として支払った治療費は、後日相手方に請求することが可能です。
 

⑥ 支払いまでの期間が長くなる要因

同じような事故でも、受け取りまでの期間には差が生じます。期間が長くなりやすい要因を把握しておくことで、見通しを立てやすくなります。
 

治療期間が長い場合

慰謝料の算定は治療期間を基礎とするため、治療が長引けばその分だけ示談の時期も後ろにずれます。ただし、必要な治療を短縮する必要はありません。主治医の判断に沿って治療を続けることが基本となります。
 

後遺障害の等級認定に時間を要する場合

等級認定の審査には通常2〜3か月かかります。医証の追加提出を求められた場合や、審査が慎重に行われる事案では、さらに長くなることもあります。
認定結果に納得がいかず異議申立てを行う場合には、さらに数か月が加わります。
 

過失割合に争いがある場合

事故態様について当事者の言い分が食い違う場合、過失割合の協議に時間を要します。ドライブレコーダーの映像や実況見分調書の取り寄せが必要になることもあります。
 

賠償額について意見が分かれる場合

提示された金額に納得できない場合、交渉が続くことで示談の成立時期は遅くなります。ただし、交渉によって金額が変わる可能性がある場面でもあります。
早期に受け取ることと、適正な金額で解決することのどちらを優先するかは、生活状況によっても変わります。見通しを確認したうえで判断されるとよいでしょう。
 

⑦ 請求できる期間にも定めがある

受け取りまでに時間がかかる一方で、請求できる期間には限りがあります。この点も念頭に置いておく必要があります。
 

損害賠償請求権の時効

人身損害についての損害賠償請求権は、損害および加害者を知った時から5年で時効となります。物的損害については3年です。
後遺障害に関する部分については、症状固定の日から起算されるという考え方が取られています。治療が長期にわたる場合でも、時効の進行についてはこの起算点を踏まえて判断されます。
 

自賠責保険への請求の期限

自賠責保険への被害者請求については、傷害分は事故日から3年、後遺障害分は症状固定日から3年、死亡分は死亡日から3年とされています。
交渉が長引いている場合や、相手方との協議が進まないまま時間が経過している場合には、時効の進行にご注意ください。時効の完成が近い場合には、時効の更新や完成猶予のための手続きを検討することになります。
 

⑧ よくあるご質問

Q. 示談書にサインしてから、どのくらいで振り込まれますか。

A. 保険会社が示談書を受領してから、おおむね2週間以内に振り込まれます。1週間程度で入金される場合もあります。予定より遅いと感じられた場合は、担当者に処理状況を確認されるとよいでしょう。
 

Q. 治療中ですが生活費が不足しています。何か方法はありますか。

A. 休業損害を月ごとに支払ってもらう方法のほか、自賠責保険への被害者請求や仮渡金の制度を利用する方法があります。また、ご自身の任意保険に人身傷害保険が付帯されていれば、そちらから受け取れる場合もあります。状況に応じて利用できる制度をご案内いたします。
 

Q. 保険会社から早く示談してほしいと言われています。応じたほうがよいですか。

A. 治療が続いている段階や、後遺障害の等級認定の結果が出ていない段階では、賠償額の全体が確定していません。この時点で示談すると、後から追加の請求ができなくなります。示談の時期については、治療の状況を踏まえて判断されることをお勧めします。
 

Q. 弁護士に依頼すると、受け取りまでの期間は長くなりますか。

A. 交渉に時間を要して示談の成立が遅くなることはあります。一方で、資料の整理や手続きが整うことで、かえって早く進むこともあります。また、期間中に利用できる制度についてもご案内できますので、生活面の不安を含めてご相談いただければと思います。
 

まとめ

交通事故の慰謝料が支払われる時期について、本記事で整理した内容を振り返ります。
 

  • ・慰謝料は示談成立後にまとめて支払われる。示談書の返送から入金までは2週間程度
  • ・事故から受け取りまでの期間は、軽傷で6か月〜1年、後遺障害の申請を行う場合は1年〜1年半が目安
  • ・治療費・休業損害・通院交通費は、治療期間中に支払いを受けられる場合がある
  • ・自賠責保険への被害者請求や仮渡金の制度により、示談前にまとまった金額を受け取れる
  • ・ご自身の任意保険に人身傷害保険があれば、示談を待たずに保険金を受け取れる
  • ・治療期間・等級認定・過失割合の協議などにより、示談の時期は前後する

 
「治療が長引いていて生活費が不安」「示談の時期をどう判断すればよいかわからない」といったご相談を承っております。ご事情を伺ったうえで、利用できる制度や進め方をご案内いたします。

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