コラム
自転車の逆走は罰則の対象になるのか? 青切符や赤切符を交付されるケースやリスクを解説
2025.07.23 弁護士相談の基礎知識自転車は左側通行しなければならず、右側通行した場合は、逆走となり、道路交通法により罰則の対象になります。また、青切符による取り締まりの対象にもなり、反則金として6,000円納付しなければならないこともあります。さらに自転車の逆走は、交通事故時に自転車側の過失が重くなるといったリスクもあります。自転車の逆走に当たるケースやその他の罰則の対象となる乗り方も解説します。
自転車の逆走は罰則の対象になるのか? 青切符や赤切符を交付されるケースとは
自転車に対する取り締まりが強化されています。悪質な自転車の運転に対しては赤切符が交付されていましたが、2026年(令和8年)4月1日からは、青切符による取り締まりが始まります。
自転車は左側通行しなければならず、右側通行した場合は、逆走となり、道路交通法では刑罰の対象とされています。また、青切符の対象にもなっており反則金の額は6,000円です。
自転車の逆走で罰則の対象となるケースや交通事故の際のリスクについて解説します。
自転車は道路交通法の車両である
自転車は、運転免許などがなくても、大人はもちろん、子どもや高齢者でも運転することができます。
気軽に運転できるだけに、歩行者と同じ扱いでよく、特に交通ルールはないのではないかと思われがちですが、自転車も道路交通法の適用を受けます。
道路交通法2条では、車両とは、「自動車、原動機付自転車、軽車両及びトロリーバスをいう」と定められています。
そして、軽車両とは、「自転車、荷車その他人若しくは動物の力により、又は他の車両に牽けん引され、かつ、レールによらないで運転する車」と定められています。
つまり、自転車は、道路交通法で車両の一つとされているため、道路交通法が定めるルールに従って乗らなければならないのです。
自転車の逆走とは?
自転車は、道路交通法で自動車と同様に車両の一つとされているため、自動車と同様の方向で走らなければなりません。
道路交通法17条4項の規定により、「車両は、道路の中央から左の部分を通行しなければならない。(左側通行)」とされています。
自転車も道路の左側を自動車と同様の方向で走らなければなりません。
道路の右側を走っていた場合(右側通行)は、逆走となってしまいます。
自転車の右側通行が逆走として禁止されている理由は、自動車とすれ違う際に自動車と衝突するリスクが高まるためです。
自転車の左側通行の具体例
自転車は車両なので、車道を走るのが基本です。具体例で確認しましょう。
車両通行帯がある道路
自動車の通行が多い車両通行帯がある道路では、左側通行帯(左側車線)の最も左寄りを通行することになっています。
左側通行帯なら、どこでもよいわけではないので注意しましょう。後方からくる自動車が追い越せるように一番左寄りで走らなければなりません。
車両通行帯がない道路
住宅街の生活道路などの車両通行帯がない道路でも、好きな場所を走れるわけではありません。
やはり、車道部分を走り、かつ、最も左寄りを通行しなければなりません。
一方通行道路
一方通行の自動車のみの通行が認められている一方通行道路も、自転車もその標識を守るのが基本です。
一方通行とされている場合は、その通行方向を守らないと逆走になってしまいます。
ただ、一方通行道路には、「自転車は除く」という補助標識があるものもあります。その場合は、一方通行道路でも自転車の逆走が認められています。
その場合でも、自転車は、道路の最も左寄りを通行しなければなりません。右寄りを通行してしまうと逆走になるので注意しましょう。
普通自転車専用通行帯
車道に普通自転車専用通行帯が設けられている場合は、自転車はその場所を通行しなければなりません。
通行方向は、自動車と同様に左側通行のみが認められています。普通自転車専用通行帯を走っても右側通行は逆走なので注意しましょう。
路側帯
車道と歩道の明確な区分がない道路では、路側帯が設けられています。
路側帯は基本的に歩行者が歩くための場所ですが、自転車が路側帯の内側に入ることも認められています。
この場合は、進行方向に対して左側の路側帯を走るようにしましょう。
進行方向に対して右側の路側帯を走ることは、やはり逆走になるので注意しましょう。
自転車道
歩道と車道に加えて、自転車道という自転車専用の道路が設けられていることがあります。
非常に幅の広い道路に設けられていますが、自転車道が設けられている場合は、基本的に自転車道を通行しなければなりません。
自転車道は、道路全体の左側、右側のどちらに設置されているものでも、通行することができます。道路全体の右側の自転車道を走ることも可能です。
ただ、自転車道の中側では、左側通行なので注意しましょう。
自転車による歩道の通行
自転車は歩道を通行できないという認識を持っている方もいらっしゃるかもしれません。
結論から言うと、自転車は歩道も走ることができます。
道路交通法63条の4には、普通自転車の歩道通行が認められる場合として、
次の3つが定められています。
- ・道路標識等により普通自転車が当該歩道を通行することができることとされているとき。
- ・普通自転車の運転者が、児童及び幼児、70歳以上の者、身体障害がある者であるとき。
- ・車道又は交通の状況に照らして普通自転車の通行の安全を確保するため普通自転車が歩道を通行することがやむを得ないと認められるとき。
なお、歩道を通行する際は、道路の左側の歩道だけでなく右側の歩道を通行することができます。
自転車で歩道を通行する際のルール
自転車で歩道を通行する際は、いくつかのルールがあります。具体的には次のとおりです。
- ・車道寄りの部分を走る。
- ・徐行する。
- ・歩行者の通行を優先し歩行者の邪魔になるときは一時停止する。
歩道を車道を走るのと同じ程度のスピードで走ることは違反なので注意しましょう。
また、警察官は、歩行者の安全を確保するため必要があると認めたときは、歩道を通行してはならない旨を指示することができるとされています。
警察官から歩道を走ってはいけないと指示された時は、その指示に従いましょう。
自転車で歩道を走れないケースもある?
児童及び幼児、70歳以上の方、身体障害がある方以外の人は、自転車で歩道を走ることはできません。
ただ、「普通自転車歩道通行可」の標識がある場合は自転車で走ることが可能です。
「普通自転車歩道通行可」の標識がある歩道には、普通自転車通行指定部分が設けられていることがあります。この場合は、普通自転車通行指定部分のみを走るようにしましょう。
それ以外のケースで歩道を通る必要があるときは、自転車から降りて押して通るしかありません。
自転車の逆走による罰則とは?
自転車の逆走等の道路交通法に違反する走り方をした場合は、道路交通法違反で罰則を科せられるおそれがあります。
自転車の逆走による法定刑は、3月以下の拘禁刑又は5万円以下の罰金とされています(道路交通法119条六号)。
また、2026年(令和8年)4月1日からは、自転車に対する交通反則通告制度(青切符)による取締りが始まります。
交通反則通告制度とは、16歳以上の違反者を対象に、反則金を課し、納金が確認されれば、刑事罰を免除されるという制度です。
自転車の逆走も青切符の対象となっており、反則金は6000円となっています。
青切符を切られた場合は、反則金を支払わないと、逮捕されて上記の法定刑を科されるおそれがあるので注意しましょう。
自転車の逆走による罰則以外のリスクとは?
自転車の逆走は、警察官に見つかった場合に反則金や罰則を科せられるリスクがあるだけでなく、交通事故に巻き込まれてしまった場合に、民事上のリスクが大きくなります。
具体的には、自転車の逆走は、道路交通法に違反する走行方法なので、自転車側の過失が加重されてしまう可能性があるのです。
自転車側の過失が加重された場合は、被害者の立場でも損害請求できる額が少なくなりますし、加害者側の立場になった場合は、損害請求額が増えてしまうことがあります。
例えば、自転車と自動車が衝突したケースでは、自転車側が被害者となって、自動車側の任意保険会社に対して、損害賠償金の支払いを求めることが多いです。
自転車側は交通弱者となるため、過失割合は軽減されます。
しかし、自転車が逆走していた場合は、自転車側の過失が重くなり、自動車側が支払うべき損害賠償金の額が少なくなってしまいます。
そのため、交通ルールを守って走行していた場合よりも受け取れる損害賠償金の額が減ってしまいます。
また、自転車と歩行者の場合は、自転車側が加害者になることが多いですが、自転車が逆走していた場合は、自転車側の過失が重くなり、損害賠償額が増えてしまいます。
自転車の逆走以外で罰則の対象となる乗り方とは?
自転車の逆走以外でも罰則の対象となる乗り方があります。主なケースを紹介します。
これらの行為で悪質な乗り方をしていた場合は、赤切符が交付されて刑事罰の対象になることもあります。
酒酔い運転や酒気帯び運転
道路交通法65条には、「何人も、酒気を帯びて車両等を運転してはならない」と定められています。
この車両等には自動車だけでなく、自転車も含まれます。
そして、この規定に反して自転車で酒酔い運転や酒気帯び運転をした場合はそれぞれ次の罰則の対象になります。
- 酒酔い運転:5年以下の拘禁刑又は100万円以下の罰金。
- 酒気帯び運転:3年以下の拘禁刑又は50万円以下の罰金。
携帯電話やスマホを利用しながらの走行
自転車を運転しているときは、携帯電話やスマホを手に握っての通話が禁止されています。
また、自転車にスマホを取り付ける場合でも、スマホの画面を注視することも禁止されています(道路交通法71条五の五号)。
これらの規定に違反して、道路における交通の危険を生じさせた場合は、1年以下の拘禁刑又は30万円以下の罰金に処せられます。
道路における交通の危険を生じさせた場合でなくても、これらの運転が発覚した場合は、6月以下の拘禁刑又は10万円以下の罰金に処せられます。
信号無視による走行
道路を通行する際は、車両等はもちろん、歩行者でも信号を無視することはできません。
自転車を運転する際に信号無視をしていた場合は、3月以下の拘禁刑又は5万円以下の罰金に処せられます。
一時不停止を無視した場合
道路標識等により一時停止することが表示されている場合は、停止線の直前で一時停止しなければなりません。
自転車に乗っているときに一時不停止を無視した場合は、3月以下の拘禁刑又は5万円以下の罰金に処せられます。
無灯火で自転車に乗った場合
日没時から日出時までの夜間に走行する時は、灯火を付けなければなりません。
夜間に無灯火で自転車に乗った場合は、5万円以下の罰金に処せられます。
二人乗り等をしていた場合
普通自転車は、2人乗りをすることはできません。
普通自転車で2人乗り等をしていた時は、2万円以下の罰金又は科料に処せられます。
通行の禁止場所の通行
道路標識等により通行禁止となっている道路は、自転車等の車両はもちろん、歩行者でも通ることができません。
これに違反して通行した場合は、3月以下の拘禁刑又は5万円以下の罰金に処せられます。
通行区分違反
自転車の逆走以外でも通行区分に違反して走行していた場合は、3月以下の拘禁刑又は5万円以下の罰金に処せられます。
自転車で並進していた場合
自転車等の軽車両は、原則として並進が禁止されています。
例えば、自転車で並んで走りながら話すようなことは認められていません。
例外は、道路標識により並進が認められている道路だけです。
それ以外の道路で、自転車で並進していた場合は、2万円以下の罰金又は科料に処せられます。
歩道通行時のルールを守っていなかった場合
自転車は歩道を通行できることもありますが、車道寄りの部分を徐行しなければならず、歩行者の通行を妨げる時は一時停止することになっています。
こうしたルールを守っていなかった場合は、2万円以下の罰金又は科料に処せられます。
自転車の逆走以外で交通反則通告制度(青切符)の対象となる乗り方
自転車も交通反則通告制度(青切符)の対象になっていますが、自転車の逆走以外では次のような違反が対象となります。
スマートフォンや携帯電話を使用しながらの走行 | 12,000円 |
---|---|
信号無視 | 6,000円 |
自転車の逆走 | 6,000円 |
歩道通行 | 6,000円 |
一時不停止 | 5,000円 |
傘差し運転 | 5,000円 |
並進しての走行 | 3,000円 |
2人乗り | 3,000円 |
まとめ
自転車は道路交通法では車両に分類されているので、道路交通法の様々なルールを守って走行しなければなりません。
道路交通法のルールを守っていなかった場合は、青切符を切られてしまいますし、悪質な場合は赤切符が交付され、刑事罰の対象として送検される恐れもあります。
こうした事態を避けるためには、道路交通法に規定されている自転車のルールを知り、ルールを守って乗ることが大切です。
ルールを守って乗っていたのに、青切符や赤切符を交付されてしまった場合は、すぐに弁護士にご相談ください。