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コラム

同乗中の事故で怪我をしたら——誰に賠償を請求できるのか解説

2026.10.31

友人の車に乗せてもらっていたとき、家族が運転する車に同乗していたとき。事故に遭い、自分だけが怪我を負ったという状況があります。
同乗者は運転していないため、事故の発生について責任を負わないのが原則です。もっとも、請求の相手が身近な人になることから、どう進めればよいか判断に迷われる方が多い類型でもあります。
この記事では、同乗者が誰に対して賠償を請求できるのか、金額が減らされる場合があるのか、家族の車に乗っていた場合の扱いについて整理します。
 

① 同乗者は誰に請求できるのか

事故には、相手方の車の運転者と、自分が乗っていた車の運転者という二人が関わっています。同乗者は、過失のある者に対して賠償を請求できます。
 

双方に過失がある場合

追突や出会い頭の事故など、両方の運転者に過失が認められる事故では、同乗者はどちらに対しても賠償の全額を請求できます。
これは、両者が連帯して責任を負う関係にあるためです。過失割合が7対3であっても、同乗者は3割の側に全額を請求することが可能です。支払った側が、もう一方に対して負担分を求めることになります。
 

片方にのみ過失がある場合

信号待ちで停車中に追突されたような事故では、追突した側にのみ過失があります。この場合、請求の相手は追突した側の運転者となります。
自分が乗っていた車の運転者に過失がないのであれば、その運転者に対して請求することはできません。
 
同乗者は、事故の発生について責任を負わないのが原則です。
そのため、過失相殺によって賠償額が減らされることは通常ありません。
運転者本人であれば減額される場面でも、同乗者は全額の請求ができるという点が特徴です。
 

② 請求できる内容

請求できる費目は、運転者が被害者となる場合と変わりません。
 

費目 内容
治療費 通院・入院・手術・投薬にかかった費用
通院交通費 医療機関への交通費
休業損害 怪我により仕事を休んだ期間の収入の減少
入通院慰謝料 入院や通院による精神的苦痛に対するもの
後遺障害慰謝料 症状が残った場合に、等級に応じて算定される
逸失利益 後遺障害により将来の収入が減少することへの補償

 
主婦として家事に従事している方、学生の方についても、休業損害や逸失利益を請求できる場合があります。収入がないことを理由に対象外となるわけではありません。
 

③ 好意同乗による減額

無償で乗せてもらっていた場合に、賠償額が減らされるという考え方があります。好意同乗減額と呼ばれるものです。
 

現在の実務での扱い

かつては、無償で乗せてもらっていたという事情のみで減額する考え方もありました。しかし現在は、それだけでは減額されないのが一般的です。
同乗していたこと自体は、事故の発生に寄与するものではないためです。
 

減額されうる場合

一方、同乗者の側に事故を誘発する事情があった場合には、減額されることがあります。
 

  • ・運転者が飲酒していることを知りながら同乗した
  • ・無免許であることを知りながら同乗した
  • ・速度を上げるよう促した、危険な運転を煽った
  • ・シートベルトを着用していなかった
  • ・運転者が居眠りしそうな状態であることを認識していた

 
これらは、同乗者自身にも落ち度があると評価される事情です。程度に応じて、1割から3割程度の減額がなされることがあります。
シートベルトの不着用については、それによって損害が拡大したと認められる場合に減額の対象となります。後部座席であっても着用義務があります。
 

④ 家族の車に同乗していた場合

配偶者や親が運転する車に乗っていて事故に遭うという状況があります。この場合、請求の相手が家族となるため、心理的な抵抗を感じる方が少なくありません。
 

保険から支払われる

実際に賠償金を支払うのは、運転者本人ではなく加入している保険会社です。家族に直接の金銭的負担が生じるわけではありません。
ただし、保険を使うと翌年以降の保険料が上がることになります。この点は、事前に確認しておかれるとよいでしょう。
 

自賠責保険の扱い

自賠責保険では、運転者本人は補償の対象外ですが、同乗していた家族は対象となります。配偶者や子どもが同乗していて怪我をした場合、自賠責保険に請求することができます。
 

任意保険では制限がある場合も

任意保険の対人賠償保険については、契約の内容により、運転者の配偶者・父母・子を補償の対象から除外している場合があります。
この場合、自賠責保険の範囲を超える部分について、対人賠償保険から支払われないことになります。契約の内容を確認しておく必要があります。
 

人身傷害保険の活用

こうした場面で有効なのが、人身傷害保険です。この保険は搭乗者を広く対象としており、家族が同乗していた場合も補償の対象となるのが一般的です。
過失割合にかかわらず、約款に定められた基準で保険金が支払われます。相手方との示談を待たずに受け取れる点も、生活への影響を抑えるうえで意味があります。
 

搭乗者傷害保険との違い

人身傷害保険と似た名称のものに、搭乗者傷害保険があります。こちらは、入通院の日数や怪我の部位に応じて、あらかじめ定められた金額が支払われる仕組みです。
実際の損害額にかかわらず定額が支払われるため、損害の補填というより見舞金に近い性質を持ちます。人身傷害保険と併せて受け取ることもできます。
ご自身やご家族の保険にどちらが付帯しているか、証券で確認しておかれるとよいでしょう。
 

⑤ 保険会社とのやり取り

どちらの保険会社が窓口になるか

双方に過失がある事故では、二つの保険会社が関わることになります。同乗者がどちらに請求するかによって、やり取りの相手が変わります。
実務では、過失割合の大きい側の保険会社が窓口となり、治療費の支払いなどを担当することが多くなっています。もっとも、決まった取り扱いがあるわけではありません。
 

提示額の確認

治療が終わると、保険会社から示談金の提示があります。この金額は、保険会社の基準によって算定されたものです。
慰謝料の算定には、自賠責保険の基準、各保険会社が独自に定める基準、過去の裁判例に基づく基準という三つがあります。どの基準によるかで金額が変わり、裁判例に基づく基準が最も高くなるのが一般的です。
提示を受けた段階で内容を確認し、妥当かどうかを検討することになります。治療の経過や症状の内容によっても、適正な金額は変わります。
 

治療費の打ち切りを告げられた場合

治療が長期化すると、保険会社から治療費の支払いを終了する旨の連絡が入ることがあります。
症状が続いているのであれば、健康保険を使って通院を継続することができます。自己負担分は、後の示談交渉において請求できます。
打ち切りの連絡があった時点で、主治医に今後の見通しを確認しておくことが望まれます。
 

運転者との関係への配慮

同乗していた車の運転者が知人や家族である場合、請求することで関係が気まずくなることを心配される方がいます。
賠償は保険から支払われるものであり、個人が負担するわけではないという点を、あらかじめ共有しておくことで進めやすくなる場合があります。弁護士が窓口となることで、当事者間の直接のやり取りを避けるという方法もあります。
 

⑥ 事故直後に確認しておきたいこと

同乗者の立場では、事故の状況を把握しにくいことがあります。運転に集中していないぶん、衝撃を受けた瞬間の記憶が曖昧になることもあります。
 

人身事故として届け出る

警察への届出は、運転者が行うのが通常です。このとき、物件事故ではなく人身事故として扱われるよう、怪我をしていることを伝える必要があります。
物件事故として処理されると、実況見分調書が作成されないため、後に過失割合を検討する際の資料が限られます。痛みを感じている場合には、その場で申告しておくことが望まれます。
 

医療機関を受診する

事故直後は緊張により痛みを感じないことがあります。数日後に症状が出てくる場合も少なくありません。
受診が遅れると、事故との関係を示すことが難しくなります。違和感があれば、早めに整形外科を受診しておくことをお勧めします。
 

連絡先を控えておく

運転していた方だけでなく、相手方の運転者についても、氏名・連絡先・加入している保険会社を控えておきます。
運転者が知人である場合、後から確認すればよいと考えがちですが、その後に連絡が取りにくくなることもあります。その場で記録しておくほうが確実です。
 

⑦ 複数人が同乗していた場合

車に複数人が乗っていて、全員が怪我を負うという事故もあります。
 

それぞれが請求できる

同乗者はそれぞれ独立して賠償を請求できます。一人あたりの金額が人数で分けられるわけではありません。
 

自賠責保険の限度額

自賠責保険の支払限度額は、傷害について1名あたり120万円と定められています。同乗者の人数によって減ることはなく、それぞれに適用されます。
後遺障害が残った場合の限度額も、等級に応じて1名ごとに設定されています。
 

任意保険との関係

自賠責の限度額を超える損害については、相手方の任意保険から支払われることになります。相手が任意保険に加入していない場合には、ご自身の人身傷害保険や無保険車傷害保険を確認することになります。
 

⑧ よくあるご質問

Q. タクシーに乗っていて事故に遭いました。

A. 乗客は同乗者として賠償を請求できます。タクシー会社は、運行供用者として責任を負う立場にあります。相手方の車にも過失がある場合には、双方に対して請求することが可能です。タクシー会社は共済に加入していることが多く、対応の窓口がそちらとなる場合があります。
 

Q. 運転していた友人に怪我はなく、自分だけが怪我をしました。

A. 怪我をした方が、過失のある者に対して賠償を請求します。友人に過失があれば友人の保険に、相手方に過失があれば相手方の保険に請求することになります。双方に過失がある場合は、いずれに対しても全額を請求できます。
 

Q. シートベルトをしていませんでした。請求できませんか。

A. 請求はできます。ただし、着用していれば損害が小さくなっていたと認められる場合には、減額の対象となることがあります。減額の程度は、怪我の内容や事故の態様によって異なります。ご状況を伺ったうえで見通しをお伝えできます。
 

Q. 事故のとき、運転していた夫が飲酒していました。

A. 飲酒を知りながら同乗していた場合には、同乗者側にも落ち度があるとして減額されることがあります。知らなかった場合には、通常どおり請求できます。また、ご家族が運転していた場合の保険の適用範囲については、契約の内容を確認しておく必要があります。
 

まとめ

同乗中の事故における賠償請求について、本記事で整理した内容を振り返ります。
 

  • ・同乗者は事故の発生について責任を負わず、過失相殺による減額は通常ない
  • ・双方に過失がある場合、どちらに対しても賠償の全額を請求できる
  • ・請求できる費目は、運転者が被害者となる場合と変わらない
  • ・無償で乗せてもらっていたという事情のみで減額されることは、現在は一般的でない
  • ・飲酒や無免許を知りながら同乗した場合などには、減額されることがある
  • ・家族の車に同乗していた場合、任意保険の適用範囲に制限があることがある
  • ・人身傷害保険は搭乗者を広く対象としており、こうした場面で有効となる

 
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